シニアプロゴルファー 岡茂 洋雄×フロムシステムダイレクト相談役 島田 克己
島田:厨房業界とは異なる業種の方と対談する『REAL』も今回で第三回となります。今回はもぐもぐビレッジの公式アンバサダーにもなっていただいております、シニアプロゴルファーの岡茂さんとゴルフ業界についてお話しをさせていただきます。本日はよろしくお願いします。
岡茂:こちらこそよろしくお願いします。
ゴルフ業界の現状
島田:コロナで我々厨房業界のみならず様々な業界が影響を受けていますが、ゴルフ業界はどうですか?
岡茂:コロナ前と比べて人気が右肩上がりに伸びています。というのも、ゴルフは屋外で密になりにくく感染リスクも低いからといって始める人が増えています。日本の場合、特に20代のゴルフ人口がこの1年で約30万人増えています。これは過去20年遡っても今が一番伸びています。
島田:ゴルフ人口も増えてきて景気がいいのですね?
岡茂:正直いいですね。日本だけでなくアメリカでも約2倍近くゴルフ人口が伸びているようです。その影響で、例えばグリップやシャフトなどのゴルフ用品はアメリカから輸入しているのですが、なかなか入荷できない状態ですね。ゴルフ人口がどんどん減ってきていたコロナ前と比べたら、ゴルフ用品が入荷待ちとなるなんて驚いています。
島田:今は右肩上がりとのことですが、今後はどうなると思いますか?
岡茂:2025年には団塊の世代が80代に突入し、ゴルフを引退してしまう人が増えて、ゴルフ人口がかなり減ってしまうと言われています。ですが、今のように若者が増え続けてくれて、ゴルフを継続して楽しんでくれれば、多少緩やかでもゴルフ業界が伸び続けていくことを期待しています。
ゴルフ場の現状
島田:ゴルフ人口が増えたのであれば、ゴルフ場も景気はいいのですか?
岡茂:いい面もあれば悪い面もありますね。ゴルフ場の経営側の話にはなりますが、レストランで仕入れる食材は物価高騰の影響を受けていますね。所属している鷹の巣ゴルフクラブの仕入れている肉なども金額が上がってきており、定価も上げざるを得なくなってきております。
島田:なるほどですね。そうであれば肉屋から直接仕入れる方法もあると思います。仕入れ先にも色々な繋がりがあると思いますけどね。ある旅館は借金があるにもかかわらず、お付き合いがあるからと高い品ばかり買っていました。経営者はお付き合いがあるからとかではなく、こういった状況下ではいかに出費を抑えていくかと考えることが必要なのです。そうでないと、ある意味私利私欲で動いている形となってしまいます。合理的に考えて変化していくことが出来る経営者と出来ない経営者が今のコロナ情勢で明確になったと思います。
給与と働き方
島田:今のゴルフ場の経営を聞くと、給与も厳しい状況ですか?
岡茂:そうですね。場所にもよると思いますが、なかなか昇給も厳しいですね。そもそも日本全体の給与が上がっていなくて、韓国に抜かれるかもしれないといったニュースも見たことがあります。
島田:GDP(国内総生産)はまだ日本の方が高いですよ。日本の給与が上がらない原因は、極論となりますが社員を容易に解雇が出来ないからだと思います。入社したらよっぽどのことがない限り解雇されず、仕事ができなくても給与は支払われますからね。労働基準法で容易に解雇が出来るようになったら、代わりに良い人を入社させたりと大きく変わっていくと思いますけどね。昇給のことで言うと、例えばある人の給料が10万円だとすれば、3倍の毎月30万円の粗利が必要だと言われています。そういったどれだけ売上に貢献しているか指標がないと経営者も昇給は考えないですよね。そこを社員は理解していけば、勉強をする・転職を考えると判断が出来ると思います。
岡茂:なるほどですね。一線を退いたプロゴルファーやプロキャディの知り合い数人からも、給与だけではなく、個人でゴルフのレッスンスタジオを持って生計を立てたいと相談があったことを思い出しました。
ジュニア世代の成長
島田:レッスンと言えば、鷹の巣ゴルフクラブにジュニア育成など盛り上げるために協力金の提供をして看板も立てて頂いておりますが、今のジュニア育成はどういった状況ですか?
岡茂:今女子プロが人気ということもあり、ジュニアのレッスンも女子7:男子3と昔と人数比が逆転していますね。親の教育にも熱が入っており、「いい先生に教えてもらいたい」といった内容をよく耳にします。ですが、私は子供を成長させるには、いい先生から教えてもらうのではなく、没頭して練習ができる環境を作ってあげることが必要だと思います。あくまで先生は変な方向に進んだのを治すだけです。自分で色々な感覚を身につけていかないとプロでは通用しないと思いますね。
島田:アメリカでも広大な練習場で1日中練習しているのを見かけたことがあります。
岡茂:そうですね。日本にはそこまで広大な土地もなく練習場に通う必要があるため、費用はどうしてもかかってきます。ですが、その中でしっかり練習する体力と気力があれば子供はどんどん伸びていきますね。
プロ世界の現状
島田:今度はプロの世界の話になりますが、男子プロと女子プロの人気はどんな状況ですか?
岡茂:今男子プロには国内にスター選手がおらず、試合数も減ってきています。逆に女子プロは人気もあり試合数や賞金も増えてきています。というのも、男子プロは今まで有名な選手など数多くいた上の世代の人気があったおかげで試合があったにも関わらず、その人気に胡座を描いていました。また、PGA(日本プロゴルフ協会)とJGTO(日本ゴルフツアー機構)へ分裂などの影響もあり協会の管理が甘く、ファンサービスなどが疎かになっていたんですね。その結果スポンサーも離れてしまいました。その点女子プロは樋口久子さんを筆頭にJLPGA(日本女子ゴルフプロ協会)がしっかり管理していてファンサービスもいいので、みんな女子プロに流れていきましたね。
島田:男子プロには過去の人気による怠慢があったのですね。今後は変わりそうですか?
岡茂:まだまだ人気が回復するには難しいかもしれないですが、男子プロでも今の若い子はファンサービスもしっかりしていますし、あとは海外の選手も女子プロのようにファンサービスを意識してもらえれば変わっていくと思います。
おまけ〜自宅でできる練習法〜
島田:最後に本筋とはそれますが、自宅でできる練習法はありますか?
岡茂:単純にゴルフが上手くなりたいのであれば、素振りが1番です。ボールがない状態であれば、打ちに行こうとして身体がブレたりすることもなく、理想のスイングを固めることができます。
島田:1日何回ぐらいしたらいいですか?
岡茂:できれば50回を目安にしてほしいです。例えば飛距離を伸ばしたいのであれば、1回目より2回目、2回目より3回目とスピードを上げて素振りをする。5回1セットとして、これを3セットやります。あとはしっかり素振りをするのを2セット。これを続けてみてください。
島田:パター練習はどうですか?
岡茂:マットを引いて練習するのもいいですが、パッティングレーンといった器具での練習をおすすめします。あとはコースのスタート前に練習グリーンで調整をする感じですね。
島田:なるほどですね。本日はゴルフ業界の色々なお話しを聞けて勉強になりました。お時間頂きありがとうございました。
岡茂:こちらこそありがとうございました。