はじめに
島田:厨房業界とは異なる業種の方と対談する『REAL』。第15回となる今回は、介護施設の運営や管理などを行っている、株式会社ワキタ・フロンティア事業部・課長上妻さんとお話しさせていただきます。本日はよろしくお願いします。
上妻:よろしくお願いします。
フロンティア事業部
島田:上妻さんが責任者として携わっているフロンティア事業部について教えてください。
上妻:弊社は今年で65期目を迎え、建機事業、商事事業、不動産事業を軸にさまざまな事業を展開しています。商事事業本部に属するフロンティア事業部は、介護事業に特化し、介護施設の不動産所有とその中に設置する機器・備品等の販売を行っております。またグループ会社では卸レンタルになります。
介護事業
島田:介護施設の開設は自己資金や銀行借入にて行うケースが多いんですか。
上妻:実はですね、ほとんどの場合、土地建物のオーナーが別に存在し、所有と運営を分けております。このような場合、お互いが利回りを決めて、長期の賃貸借契約を締結し運営しております。
島田:ワキタさんはパートナー選びではどのように行っているんですか。
上妻:弊社は運営面には直接関与しておりませんので、運営会社の規模、与信面、弊社との協力体制や代表者同士の面談を通じて運営会社を選定しています。
リスク面で飲食店と違うのは、運営をやめても入居者が残るという点です。運営会社が施設を撤退した場合、不動産を所有している企業に責任問題の追及が生じてしまうこともありますので、パートナー選びは慎重に行っています。
高齢化社会
島田:現在、高齢者人口の割合が高くなっているようですが、そのことに対して思うことはありますか。
上妻:ありますね。65歳以上の割合、いわゆる高齢化率は30%を超えており、また、65歳以上を20歳以上65歳未満の労働者人口では、1.7人に1人を支える状況です。今後この割合は厳しくなる一方で、社会構造的問題となります。高齢者人口が増加し、介護を必要とする方を受け入れる施設はまだまだ不足しており、その施設を少しでも増やすことで社会貢献ができればと考えております。
人材不足
島田:現在介護業界では人材不足も深刻ですよね。
上妻:そうですね。介護業界は介護保険料収入が決まっているので給与を上げることが容易ではなく、他業界との年収格差もあります。政府は人材流出を防止するために手当や処遇改善を行っていますが、課題はまだ残っていると思います。
また最近は、介護施設でも医療が必要な高齢者が入居していることが増えています。例えば点滴が必要な方などを対応するためには看護師が必要です。介護士だけではなく看護士も確保するのは大変だと聞いております。
島田:現状対策はありますか。
上妻:介護業界でも自動化やDX化が進んでいます。介護施設によっては人員配置基準があり、例えば、3人の患者に対して1人の職員が必要などの規定があります。人員が足りない場合は入所を受け付けられないこともあります。そのため、センサーやカメラを活用したDX化が進んでいます。例えば、ナースコールを押したときにカメラで状況を確認し、緊急度に応じて対応するなど効率化が図られています。
展望
島田:今後の展望など教えてください。
上妻:自分達で面倒を見るという古い価値観に囚われ介護施設に預けない結果、身体的負担や介護離職、子どもが介護を担う“ヤングケアラー”といった問題が表面化しています。介護認定を受け、専門のサービスを受けることがスタンダードになっていくために介護施設の整備を進めていく必要があると思っています。
また、人材不足を補うための介護DXが発展してきており、見守りカメラやベッドの離床センサーなど、多くのベンチャー企業が同様の商品を提供しています。しかし、運営会社側は、どの商品を選択すべきか迷ってしまうため、我々がオペレーションのあった商品を導入した施設を提供する介護の総合的商社としての位置付けを目指していきたいと思っています。
島田:様々な商品を1つの施設にまとめていくことで効率化や人材を補う方法に繋がっていくと思います。本日は興味深いお話しをお聞きできました。ありがとうございました。
上妻:こちらこそありがとうございました。
■株式会社ワキタ ホームページ
https://www.wakita.co.jp/
プロフィール
上妻 顕之輔(こうづま けんのすけ)
1975年大阪生まれ。
㈱ワキタに入社後、広島・東京を経て現在は本社大阪にて勤務。
本業の建機事業ではなく、飲食店・商業施設やアミューズメント事業へのファイナンスに携わり、現在は超高齢化社会が直面する介護事業に特化した施設建設や商材販売の責任者として活動。
趣味が国内旅行で仕事でも広範囲の営業活動も相重なって、 あと3県で日本全国制覇が最近の目標。